続・猫に腕まくら

ぶっこわれています

高齢ひきこもり独女、12年ぶりに働き始める 2…そして「うちは慈善事業じゃない」

思えば、面接の時に金銭的なことをずいぶん言われた気がする。


去年の10月に最低賃金が高くなった。


アベ政権になってから『最低賃金1000円を目指す』聞いたときは、いやー無理無理と金持ち坊ちゃんはやっぱりわかっていらっしゃらぬと思った(そして最近では主婦パート月25万設定発言)。それは働く側になれば賃金があがるのは嬉しい、けれど支払い能力のある会社ばかりじゃないじゃん、現実は一番最初に切られるのは人件費じゃん、と。それでも、着実に時給は上がってきている。私のいる県では1000円まであと100円をビミョーに切ってきている。


― 時給は最低賃金だけど、これだってホントは大変(こんなに出したくないのが本音)。健康保険・厚生年金はないけど、雇用保険と労災はいやだけどまあ仕方なくあります。残業代は時給アップしません。休日出勤もアップなし。どのみち1日に勤務時間が8時間以下の話だから、当然ね。ー


本当に本当に、従業員への支払いが惜しいというのがにじみ出ていた。


HPも求人もネット上には何もないので、この会社の何もわからないまま面接をすすめたが、唯一わかったのは、数年前民事再生法をうけていたことだ。そして、何年か後にそれが終わっている。これくらいの規模の町工場だったら、あっさりと廃業する方が多いだろうに、あえて再生法で頑張った会社だ。だから、並々の努力ではなかっただろうな、金銭的に締めてかかっているのは仕方ないことだろうな、と、すべてに「はい(了解です)」と返事した。とにかく私は家の近場で働きたいだけなのだ。


実際に働きはじめても、節約意識は高く感じられ、ダンボールを梱包するガムテやマジックは備品を使っても、シャーペンは自前以外しか使う気になれない。手は汚れるので水で洗うことはあるが、トイレは自宅まで我慢している。別にそうせよと言われたわけではないが、何となく。


話がずれてしまったようだが、これはこれからの展開に必要なので。


そして、その試用期間最後の日。経営者と面接。


働き始めて1ヶ月と10日。毎日働いているわけではないので、勤務日数は20回に満たない。


「どうですか、続けられそうですか?」
「はい。できれば続けていきたいです」

「見てるとねー、まだ、完璧ではないよね。ミスもするし遅いよね」
「はい。すみません」
「時給●●●円だよね。それで利益を得るためにはそれ以上の仕事をしないといけないよね。
 たとえば、これ、1本300円。これ3本以上できないと、時給に対し生産性が悪いよね。

うちは慈善事業しているわけじゃないから、

それじゃ困るんだよね。
見合った働きをしてもらわないと。
だから、こうしよう。半年後、まだできていないようだったら、(解雇するか)また考えるんで、
半年の更新制にしよう」
「はい。では8月○日ですね」
「まーおれ、忘れてるかもしれないけど、またその時話をしよう」
「私忘れませんから大丈夫です」
「あ、この話はみんなに内緒ね」
「わかりました」


部屋をでてから、モヤモヤでアタマの中が一杯になった。


マーブル模様の混沌状態である。


そして何より一番心に響いたのが、

慈善事業。慈善事業。慈善事業。慈善事業。


きっと人からはまたイジケテルと言われるかもしれないけれど、

―うちの工場は、メンヘラがくる作業所じゃない―。

そんな含みを感じてしまったのだ。
体面を気にする人っぽいので、自分の愛社にたいする正直な自尊心か。


その点は私の屈折した主観であるとまずおいて置こう。
しかし、
いくら社会から離れた12年を過ごした私とはいえ、
ちっぽけな常識だってすこしは残っている。


   初心者のパート社員の時給生産高でなくてはならない。


それが雇用に影響するほど世の中は変わったのか?
1ヶ月半弱で、何年も働いている従業員を上回る完璧さと量産を求められるのか。
そんならもう、新入りなんて今後とらないほうがいい、、、のではないか。
ペッパー君でも買ったらどうか(ああ初期費用と月々の使用料がかかるか)。
何といっても本気でそう考えて発言しているなら、経営なんて辞めてしまえ。


面接後に知ったことなのだが、実は経営者と同じマンションのなかで、数階挟んで上階と下階で暮らしている超ご近所さんだったのだ。だから体面上むげに面接で断ることもできずに、ビョーキ持ちでもとりあえず雇った。だけど本音としては、早く辞めて欲しい。はっきり言って気に入らないんだよ、あんたのこと。そういうことなのだろうか。そういうことなのだろう。